生成AI以前と以後でエンジニアの文章はどう変わったのか: Qiitaの7万記事を数えてみた話

by 逆瀬川ちゃん

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こんにちは!逆瀬川ちゃん (@gyakuse) です!

今日は生成AI以前と以後でエンジニアが書く文章がどう変わったのかを、Qiitaの記事を数えて確かめた結果をまとめていきたいと思います。

最近の技術記事を読んでいると、見覚えのある言い回しに出会うことが増えました。「地味に効きます」「静かに壊れる」「〜とは別物です」みたいなやつです。太字と箇条書きもやたらと多い気がします。ただ、こういうのは肌感だけで語るとだいたい外すので、2019年から2026年までの各年8月にQiitaへ投稿された記事をすべて集めて、実際に数えてみました。

先に結果をざっくり書いておきます。

  • 記事の組み立て方はかなり変わっていました。2026年の記事は2019〜2022年と比べて、地の文がおよそ2倍に長くなり、太字はおよそ3倍、箇条書きの割合はおよそ1.8倍になっています
  • 1文の長さは35字から39字に伸びていましたが、これはAI以前から続いていた変化の延長でほぼ説明できる範囲でした
  • 読点は増えていました。1文あたりの読点は0.63個から0.95個になっています
  • 「実測」「既定」「入口」「事故」「別物」のように、AI以前はほとんど使われなかった語が、2026年には5〜7%の記事に出てくるようになっていました
  • 一方で、AIっぽい言い回しの代表のように言われる「しましょう」は、むしろ減っていました

以下では、どうやって数えたのか、何がわかって何がわからないのかを順番に見ていきます。

「文章が変わった」を何で測るか

「AIっぽい文章」という言葉はよく使われますが、中身はわりとふわっとしています。英語圏では、これを実際に数えた研究がいくつもあります。PubMedの論文の要旨1,500万件以上で「delve」のような語が過去の傾向より増えた分を数えて、2024年の要旨の少なくとも13.5%がLLMで処理されたと推定した研究(Kobak et al., 2025)や、学会の査読コメントのうちLLMが大きく書き換えた割合を推定した研究(Liang et al., 2024)がよく知られています。論文だけでなく、消費者の苦情、企業のプレスリリース、求人でも、ChatGPTの公開直後から同じような変化が起きていて、2024年末には1〜2割程度の文書にLLMの助けがあったと推定されています(Liang et al., 2025)。技術文書では、GitHubのプルリクエストの説明文を集めて語の使い方でまとめたところ、あるまとまりが2025年初めの0.7%から2026年半ばには39%に増え、その特徴語が「load-bearing」だったという分析があります(Abraham, 2026)。

書き手の側でも、AIっぽさはかなり気にされるようになっています。英語では、AIが書いた文章の特徴を取り除くClaude Code向けのスキル(blader/humanizer)が作られ、たくさんのフォークが生まれています。日本語でも、「重要なのは」「このように」のような定型句や単調な文体を見つけて自然な日本語に直すAgent Skill(natural-japanese)が人気を集めています。どちらも、AIっぽいとされる書き方を具体的なパターンとして挙げて、それを見つけて書き直させるものです。

ただ、日本語の技術記事を生成AIの前後で比べて数えた分析は、探した範囲では見つかりませんでした。近いものとしては、自分の記事と同じタグのほかの人の記事を比べて、英語で見つかった特徴語が日本語の記事にはほとんど出てこず、うまく測れなかったと報告している記事があります(suwa_nobu, 2026)。英語の特徴語をそのまま持ってきても日本語の記事では測れないので、日本語の記事の中で何が増えたのかを、一から探す必要があります。

そこで今回は、次のような指標を決めて数えることにしました。

分類 指標
平均文長、文長のばらつき(変動係数)、読点と読点の間の文字数
記事 地の文の文字数、箇条書きの割合、太字の頻度
語彙 2026年に増えた語と減った語、AI以前はまれだった語
そのほか 見出し、絵文字、ダッシュ、文体、文末の言い回し、読みやすさなど

文と記事の6つを主要な指標にして、データを見る前に「箇条書きと太字は増える」「文長のばらつきは小さくなる」と予想を書いておきました。LLMの出力は文の長さがそろいやすく、箇条書きと太字を多く使うと言われているからです。指標をたくさん比べると、偶然の差がどこかで出てきやすくなります。なので、何を主に見るかと、差があるとみなす基準は先に決めて、設計書に残してから数えています。語彙の分析の一部(AI以前はまれだった語を探す分析など)は、結果を見た後に加えたものです。

さて、何を測るかが決まったら、次はどのデータで比べるかです。

Qiitaの各年8月の記事をすべて集める

比べるのは、2019年から2026年までの各年8月に投稿された記事です。同じ8月どうしで比べれば、夏休みの学生の投稿のような季節の影響をそろえられます。ChatGPTの公開は2022年11月30日なので、2019〜2022年をAI以前とし、この4年分で年ごとの揺れの大きさとそれまでの傾向を見ます。2023〜2025年は移行期として、変化の途中を見るのに使います。

Qiita APIで7万記事を取る

Qiita API v2 の記事一覧は、created:>=2026-08-01 created:<2026-08-02 のように作成日で検索できます。ただし1回の検索で取れるのは100件×100ページの1万件までで、2026年8月は11,562件あったので、1日ずつ検索しています。一覧APIの結果に本文のMarkdownが含まれているので、記事ごとに追加でリクエストする必要はありません。認証トークンを使えば1時間に1,000回まで送れるので、すべて取っても30分かからないくらいでした。

取得した記事 分析の対象
2019 9,309 6,034
2020 10,407 7,076
2021 8,145 5,250
2022 7,103 4,116
2023 6,920 4,990
2024 7,815 5,813
2025 9,263 6,983
2026 11,562 10,469

合計70,524件です。ここから、スライドモードの記事、AI以前の記事のうち2022年11月30日以降に更新されたもの(あとからAIで手を入れた可能性があるため)、地の文が300字未満の短い記事、日本語以外の記事を除いて、50,731件を分析しました。

2026年8月は8年間でいちばん投稿が多い月でした。短い記事の割合もかなり違っていて、地の文が300字未満の記事は2019〜2022年には各年の3割前後あったのに、2026年は7%しかありません。このあたりからすでに、2026年の記事が長くなっている気配があります。

データの扱い

記事は公式のAPIで、利用制限の範囲内で2026年9月11日に取得しました。記事の著作権は各投稿者にあるので、取得した本文は手元での集計にだけ使っています。この記事に載せているのは集計した値と、多くの記事に共通して出てくる短い言い回しだけです。言い回しの例は、2026年に20人以上の著者が使っていたものに限りました。記事の本文、著者名、記事のURL、取得したデータは公開していません。また、この記事は個人の分析で、Qiita株式会社とは関係ありません。

コードを除いて「地の文」を取り出す

技術記事にはコードブロックや表、コマンドの出力がたくさん入っています。これを混ぜたまま文の長さを数えると意味のない値になるので、Markdownを1行ずつ見て、コード、表、引用、見出し、箇条書きを分けました。残った普通の段落の文章を「地の文」と呼んでいます。文の長さと読点は地の文だけで数え、箇条書きは「箇条書きの割合」として別に数えています。

ひとつ悩ましかったのは文の区切り方です。Qiitaでは段落の中の改行がそのまま改行として表示されるので、句点を打たずに1行ずつ書く人がそこそこいます。そこで行の終わりも文の終わりとみなし、行が読点で終わっているときだけ次の行につなげることにしました。細かい規則はAppendix Aにまとめています。

「AIがなかったら」の予測値と比べる

比べ方はこうです。2019〜2022年の年ごとの平均に直線を当てはめて、そのまま2026年まで延ばします。これを「AIがなかった場合の予測値」とみなして、2026年の値との差を見ます。差はAI以前の記事の標準偏差で割って、指標どうしで比べられるようにしました。0.2で小さい差、0.5で中くらい、0.8で大きい差というのが、よく使われるCohenの目安です。

もうひとつ気にしたのは、同じ著者の記事どうしは似ることです。1人で何十本も書く人がいると、記事単位で数えた信頼区間は狭くなりすぎます。そこで、著者を単位にしたブートストラップ(著者を復元抽出して計算し直すことを1,000回繰り返す)で信頼区間を出しています。1年に数千件あると、わずかな差でもp値が小さくなるので、p値は使っていません。計算の詳細はAppendix Bにあります。

準備が整ったので、結果を見ていきましょう。

記事の組み立て方が大きく変わった

主要な指標の推移

青い点が比べる年(2019〜2022年と2026年)で、灰色の点が移行期(2023〜2025年)です。破線はAI以前の直線を延ばした予測値です。

指標 AI以前の平均 予測値 2026年 予測値との差
平均文長(字) 35.4 38.9 39.2 +0.01(−0.15〜+0.12)
文長の変動係数 0.609 0.546 0.535 −0.07(−0.19〜+0.05)
読点間の平均文字数(字) 21.2 22.7 19.2 −0.17(−0.33〜−0.08)
地の文の文字数(字) 976 994 1,914 +0.89(+0.75〜+1.02)
箇条書きの割合 8.9% 8.0% 16.4% +0.57(+0.45〜+0.69)
太字の頻度(1,000字あたり) 1.26 1.27 3.83 +0.84(+0.65〜+1.01)

括弧の中は95%信頼区間です。地の文の文字数は分布が右に長く伸びるので、幾何平均で見ています。

企業アカウントの記事やAI関連のタグが付いた記事を除いたり、著者ごとに平均してから集計したりしても、結果はほとんど変わりませんでした(Appendix C)。2026年の記事の34%にはAI関連のタグが付いていますが、変化はAIについて書いた記事だけで起きているわけではなさそうです。

長くて太字と箇条書きの多い記事になった

いちばんはっきり変わったのは記事の組み立て方です。地の文の文字数は976字から1,914字とおよそ2倍になり、太字は1,000字あたり1.26個から3.83個とおよそ3倍、箇条書きの割合は8.9%から16.4%になりました。どれも予測値との差が+0.57〜+0.89で、中くらいから大きい変化にあたります。予想していた「箇条書きと太字は増える」は、そのとおりになりました。

太字と箇条書きがなぜ増えたのかを考えるうえでは、人の評価者も報酬モデルもリストや太字の多い回答を好むことを示した研究(Zhang et al., 2025)や、Chatbot Arenaで回答の長さや太字、リストの数をそろえて比べると順位が大きく入れ替わったという分析(Li et al., 2024)が参考になります。人に好まれやすい書式を身につけたモデルの文章が、そのまま記事に入ってきているのかもしれません。

面白いのは時期の違いです。箇条書きと太字は2025年がいちばん多く(箇条書き19.7%、太字4.45個)、2026年は少し減っています。それに対して地の文の長さは、2023〜2025年は1,100字前後で、2026年に一気に伸びています。同じ「AI以後」でも、2025年と2026年では変わり方が違うようです。

文の長さはもともと伸びていた

1文の長さは2019年の34.7字から2026年の39.2字に伸びています。これだけ見ると「AIで文が長くなった」と言いたくなるのですが、2019〜2022年のあいだにもすでに伸びていました。直線を延ばした予測値は38.9字で、2026年の値とほぼ同じです。米国土木学会の論文の要旨を25年分調べた研究でも、LLM以前から要旨と文が長くなる傾向が続いていたと報告されています(Sanger and Maurer, 2026)。AIの影響を見るときは、こうした長い傾向を差し引かないといけません。ただ、2022年の平均は1文が極端に長い記事1件で押し上げられていて、極端な値を抑えて計算し直すと、文の長さもわずかに伸びた可能性が出てきます(Appendix C)。

文長のばらつき(変動係数)も同じで、0.62前後から0.535に小さくなっていますが、AI以前からの傾向で説明できる範囲でした。「ばらつきは小さくなる」という予想は、傾向を超える変化としては確かめられませんでした。

読点は増えた

読点と読点の間の文字数は、21.2字から19.2字に縮みました。1文あたりの読点の数でいうと、0.63個から0.95個に増えています。文が少し長くなって、読点はそれ以上に増えた、という感じです。予測値との差は−0.17で、小さい差の目安にはぎりぎり届かないのですが、AI以前の隣り合う年の差の最大値は超えています。

さきほどの土木学会の研究でも、LLMの助けを受けたと判定された要旨ではカンマの使用が増えていました(Sanger and Maurer, 2026)。日本語でも、GPTが書いた求人の文章は人の文章より句読点が多いという報告があります(LAPRAS, 2023)。ただしこちらは企業のブログで、比べた文章の数は書かれていません。

組み立て方が変わったのはわかりました。では、使われている語はどう変わったのでしょうか。

語彙は何が増えて何が減ったか

手順を書く文章から仕組みを説明する文章へ

語はMeCab(fugashi)とUniDicで形態素解析して、原形で数えています。AI以前と2026年の語の出現回数を対数オッズ比で比べました。偶然の差を拾わないように、2026年の記事を著者単位で2つの組に分けて、片方で選んだ語がもう片方でも同じ方向に出るかを確かめています。この表は、AI関連のタグが付いた記事も含めて数えています。

2026年に多い語 AI以前に多い語
設計、判断、検証、整理、運用、レビュー、経路、安全、重要、失敗、承認、境界、構造、品質、根拠 インストール、コマンド、設定、クリック、表示、ファイル、ボタン、ディレクトリ、ダウンロード
だけ、まま、ず、その、同じ、別、一方、全部、実際 以下、下記、上記、参考、こちら、先ほど
残る、効く、見える、直す、測る、壊れる、止まる、任せる 思う、感じ、〜てる、〜てみる、とりあえず、色々、簡単、わかる

AIの話題の語(claude、エージェント、プロンプトなど)や、rails、dockerのような技術名は表から外しています。

AI以前の記事は、手を動かした手順を、画面やコマンドを指しながら、書き手の感想を交えて書くものが多かったようです。「以下のコマンドを実行します」「こちらを参考にしました」「とりあえず動いた感じです」のような文章です(この3つは説明のために私が作った例です)。2026年の記事では、設計や検証のような抽象的な語で、仕組みと運用を説明する文章が増えています。

記事が長くなるとありふれた語が「増えて」見える

Kobakらにならった excess vocabulary の方法も試しました。AI以前の4年の傾向から2026年の文書頻度(その語を含む記事の割合)を予測して、実際にどれだけ上回ったかを見る方法です。

ところが、これをそのまま使うと、上位に「へ」「だけ」「まま」「まで」「同じ」のようなありふれた語が並びます。2026年の記事は地の文が約2倍に長いので、記事全体で数えると、ありふれた語ほど「その語を含む記事」の割合が上がってしまうからです。論文の要旨のように長さのそろった文章なら問題にならないのですが、ブログ記事では長さの変化を差し引かないといけません。

そこで、各記事の先頭200語だけで数え直してみました。AI関連のタグが付いた記事を除いて、語を選ぶのに使わなかった検証用の組で見ると、「設計」はおよそ4倍、「整理」は6倍、「壊れる」は7倍、「瞬間」と「止まる」は8倍、「単なる」は13倍、「実測」は18倍になっていました。記事が長くなった分を差し引いても、これらの語は増えています。

「効く」「瞬間」「静かに」

語の変化の中でも、個人的にいちばん肌感と合っていたのは次のような語です。

AI以前 2026年 2026年によく見られる言い回し
効く 2.0% 22.3% 〜が効いてくる、地味に効きます
瞬間 0.9% 13.7% 〜した瞬間
壊れる 0.8% 13.1% 〜が壊れている、〜も壊れない
境界 1.0% 12.8% 〜の境界を、境界値
実測 0.1% 9.4% 実測では、〜の実測値
静か 0.1% 4.9% 静かに壊れる
黙って 0.1% 3.4% 黙って捨てられる、黙って無視される
正本 0.0% 1.7% 〜を正本にする、〜を正本として

地の文と箇条書きにその語を含む記事の割合です。この表は、AI関連のタグが付いた記事も含めて数えています。次の節の表はAI関連のタグが付いた記事を除いて数えているので、同じ語でも値が違います(「実測」は9.4%と7.2%)。

「効く」を含む記事は2%から22%と、10倍以上になりました。「〜た瞬間に」の形は2026年に428人の著者が使っていて、ごくありふれた言い回しになっています。「静かに壊れる」「黙って無視される」は英語の silently break や silently ignored に、「〜した瞬間」は the moment に、「正本」は source of truth にそのまま対応していそうです。英語で考えたことを日本語に置き換えたような言い回しが、日本語の技術記事に入ってきているように見えます。ただし、これは用例を見たうえでの解釈で、翻訳された文章だと確かめたわけではありません。

また、これはAIが書いた文章が増えただけとは限りません。英語では、台本のない会話(ポッドキャスト)でも、ChatGPTの公開後に「delve」のような語が急に増えたことが報告されています(Yakura et al., 2024)。人がAIの文章を読むうちに、その言い回しを自分でも使うようになっている可能性があります。

ここまでで気になる語はいくつも見つかったのですが、上位の語だけを見ていると、ほかの語に気づけません。そこで、AI以前はまれだった語をまとめて探してみました。

AI以前はまれで2026年に広がった語彙

探し方

AI関連のタグが付いた記事を除いて、次の条件をすべて満たす語を探しました。

  • AI以前にその語を含む記事が0.5%以下
  • 2026年の2つの組のどちらでも0.8%以上、かつAI以前の5倍以上
  • 英字の語、固有名詞、数ではない

これで402語が見つかりました。ただ、候補の語の使われ方を眺めていると、まったく同じ言い回しがちょうど同じ件数ずつ並んでいる語がいくつもありました。1人の著者が似た記事をまとめて投稿していると、文書頻度だけでは語が広まったように見えてしまいます。そこで「2026年にその語を使った著者が30人以上」「1人の著者の記事が、その語を含む記事の2割以下」という条件を足して、17語を除きました。残った385語は、その語を使った著者の割合で比べても、2026年はAI以前の8.8倍(中央値)です。

AI以前はまれで、2026年に広がった語

分け方は私の判断ですが、目立つ語を並べると、次の5つのまとまりがありました。表の言い回しは、2026年に20人以上の著者が使っていたものから選んでいます。20人以上に共通する言い回しがなかった語は「なし」としています。

確かめることや疑うことを表す語

AI以前 2026年 言い回し
実測 0.1% 7.2% 実測では、〜の実測値
疑う 0.5% 6.3% 〜を疑って、疑う前に
照合 0.3% 4.5% 〜と照合して
見落とす 0.3% 4.1% 見落とされがち
突き合わせる 0.06% 3.7% 〜を突き合わせると
断定 0.08% 2.4% 〜とは断定できません
取り違える 0.02% 1.4% 〜を取り違えると

位置や役割を場所や物にたとえる語

AI以前 2026年 言い回し
入口 0.4% 6.8% 〜の入口として、〜の入口に
土台 0.3% 5.5% 〜の土台に、〜するための土台
道具 0.3% 4.1% 〜するための道具
核心 0.07% 2.4% 〜の核心です
主役 0.1% 1.9% 〜の主役は、今回の主役
構図 0.09% 1.6% 〜という構図
線引き 0.04% 1.3% 〜という線引き

「〜するための土台」「〜するための道具」の形は、それぞれ59人と97人の著者が使っていました。物事の役割を、場所や物にたとえて説明する書き方です。

障害や失敗を表す語

AI以前 2026年 言い回し
事故 0.3% 6.8% 〜という事故、事故が起きる、事故を防ぐ
混ざる 0.4% 4.9% 〜が混ざっている
落とし穴 0.3% 4.0% 落とし穴があります
破綻 0.2% 2.7% 破綻します
実害 0.08% 1.4% 実害はありません
素通り 0.04% 1.1% 〜を素通りして

作業を比喩的に表す動詞

AI以前 2026年 言い回し
切り分ける 0.5% 5.2% 原因を切り分ける
潰す 0.3% 4.2% 1つずつ潰していく
踏み込む 0.3% 2.7% 〜まで踏み込んで
塞ぐ 0.04% 1.5% なし
溶かす 0.1% 1.3% 時間を溶かしました
逃がす 0.01% 1.2% なし
倒す 0.2% 1.1% 〜側に倒す

判断や評価を述べる語

AI以前 2026年 言い回し
既定 0.5% 7.1% 既定では、〜は既定で
別物 0.4% 5.5% 〜とは別物、〜は別物です
定番 0.5% 3.6% 〜が定番です
要点 0.5% 3.2% 〜の要点は、〜が要点です
素朴 0.2% 2.7% 〜という素朴な
定石 0.1% 1.8% 〜のが定石です
桁違い 0.05% 1.1% 〜が桁違いに

「〜のが定石」(61人)、「〜が要点です」(40人)、「〜が定番です」(35人)のように、評価の名詞を「〜です」で置いて文を締める形も見られます。

増えた時期の違い

増えた時期の違い

増えた時期で分けてみると、385語のうち197語は、増えた分の8割以上が2025年から2026年のあいだに起きていました。反対に、増えた分の6割以上が2025年までに起きていた語は36語で、残りの152語はその中間です。2025年までに増えた語には「強み」「両立」「堅牢」「早期」のようなビジネス文書に多い語が多く、どれも2023年から増え始めています。

主要な指標でも、箇条書きと太字は2025年がピークで、地の文の長さは2026年に大きく伸びていました。Qiitaの記事を見るかぎり、2026年はClaude CodeやCodexのようなCoding Agentが一気に広まった年でもあります。ClaudeCode、Codex、Cursorなどのタグが付いた記事は、2025年8月の3.1%から2026年8月には9.5%に増えました。コードだけでなく記事もCoding Agentと一緒に書く人が増えたことが、2026年の変化に関係していそうです。ただ、今回のデータだけで理由を言い切ることはできません。

言い換えなのか足されたのか

「既定」が増えたなら「デフォルト」は減ったのかと思って確かめてみました。その語を含む記事の割合で見ると、「デフォルト」は15.6%から13.9%とほとんど減っていません。ただ、2026年の記事は長くなっているので、記事の割合だけでは使われ方の変化がわかりません。そこで、地の文と箇条書きの1万字あたりの回数でも比べてみました(AI関連のタグが付いた記事を除いて、文字列で数えています)。

AI以前 2025年 2026年
既定 0.05 0.15 0.55
デフォルト 1.88 1.32 1.01
要点 0.03 0.07 0.14
ポイント 1.31 1.86 2.05
実測 0.01 0.03 0.79
計測 0.22 0.16 0.48
ハマる 0.26 0.13 0.27

1万字あたりで見ると、「デフォルト」は1.88回から1.01回とほぼ半分になり、「既定」は0.05回から0.55回に増えています。一部は「既定」に置き換わったのかもしれません。それに対して「要点」と「ポイント」、「実測」と「計測」は、どちらも増えています。こちらは言い換えではなく、語が足されたように見えます。「ハマる」(「ハマった」「ハマり」などを含む)は2025年に半分まで減ったあと、2026年にはAI以前と同じ水準に戻っていました。

さて、語彙のほかにも、数えてみると変わっていたところがいくつかありました。

そのほかに変わったこと

探索的な指標

主要な指標のほかに、判断には使わない探索的な指標もいろいろ数えています。目立ったものを挙げます(すべての値はAppendix Dにあります)。

指標 AI以前 2026年
見出しに「まとめ」がある記事の割合 12% 52%
見出しに絵文字を含む記事の割合 0.9% 5.9%
タイトルの文字数 33.9 42.2
ダッシュ「—」「―」(1,000字あたり) 0.04 0.43
です・ます調の文の割合 50% 66%
です・ます調とだ・である調が混ざった記事の割合 48% 31%
漢字の割合 19.0% 24.4%
カタカナの割合 15.3% 14.1%
感嘆符(1,000字あたり) 0.93 0.29
文末の「しましょう」(1,000字あたり) 0.114 0.034
文頭の「また、」(1,000字あたり) 0.207 0.119
文頭の「さらに、」(1,000字あたり) 0.012 0.034

「まとめ」の見出しは、半分以上の記事に入るようになりました。ダッシュはおよそ10倍です。英語ではChatGPTがem dashを使いすぎることが「ChatGPT hyphen」と呼ばれて話題になり(Rolling Stone)、OpenAIが「指示すれば使わないように直した」と発表するほどでした(TechCrunch)。医学系のプレプリントでも、em dashを含む要旨の割合がChatGPT以前の4.2%から以後の11.6%に増え、2025年には20.3%になったと報告されています(Czuma, 2026)。LLMがMarkdownで書く習慣を学んだ結果、Markdownの記号を使わないように指示してもem dashだけは残る、という仮説を立てた研究もあります(Freeburg, 2026)。日本語の技術記事でも、同じ記号が増えています。

意外だったのは、AIっぽいと言われがちな「しましょう」「することが可能です」「また、」が減っていたことです。「しましょう」を含む記事の割合は10.3%から6.0%に下がりました。「〜しましょう」で読者に呼びかける書き方はもともと少数派でしたが、さらに減っています。英語でも、「delve」はAIらしい語として話題になったあとで減った一方、ほかのAIに多い語は増え続けたという報告があります(Geng and Trotta, 2025)。AIらしいと知られた言い回しは、書き手が避けたり、モデルの側で使わなくなったりするのかもしれません。冒頭で書いたような、AIっぽさを消すAgent Skillが広まっていることも、これと同じ流れにあるように見えます。

感嘆符も3割ほどに減っていて、です・ます調で統一された、感嘆符の少ない文章が増えています。漢字の割合が上がってカタカナの割合が下がったのは、漢語が増えたこと(語数に対する漢語の割合は18.1%から21.4%)と関係していそうです。論文の要旨でも、ChatGPTの後に接続語が減り、読みにくくなったと報告されています(Bao et al., 2025)。今回もjReadabilityは2.59から2.02に下がり、難しい側に動きました。ただしjReadabilityは平均文長を式に含むので、文が長くなった分だけ難しい側に出る点には注意が必要です。

何がわかって何がわからないか

ここまでの結果から言えるのは、2026年のQiitaの記事が、AI以前の傾向から予測されるものとは違っているというところまでです。いくつか注意があります。

  • AIが書いた文章が増えたことと、人間の書き方が変わったことは区別できていません。全体の平均を比べると、両方がまとめて出てきます
  • AI関連のタグが付いていない記事にもAIの話題は含まれうるので、タグで除いても話題の影響を完全には取り除けていません
  • AI以前の記事は、2026年9月まで削除されずに残った記事だけです。スパムや質の低い記事が消えていれば、条件はそろっていません
  • 8月の記事だけを見ているので、ほかの月でも同じかはわかりません
  • 画像の入れ方など、Qiitaの編集画面の変化が書き方の指標に影響している可能性があります
  • 予測値は4年分の点に直線を当てはめたもので、AI以前の傾向がそのまま続いたという前提に頼っています
  • ある語が増えた理由がAIの書いた文章にあるのかは確かめていません。語の分け方と、言い回しの解釈も私の判断によるものです

まとめ

  • 2026年のQiitaの記事は、AI以前と比べて地の文がおよそ2倍に長く、太字はおよそ3倍、箇条書きはおよそ1.8倍になりました。文の長さの変化は、AI以前からの傾向の延長でほぼ説明できました
  • 「実測」「既定」「入口」「事故」「別物」「効く」「静かに」のような語が一気に広がり、その多くは2025年から2026年のあいだに増えています
  • 「しましょう」のような、よく言われるAIっぽさの目印は、むしろ減っていました

Appendix A: 前処理の規則

Markdownの本文を上から1行ずつ読み、次のように分けました。

種類 判定 扱い
コードブロック ``` または ~~~ で囲まれた範囲 除く
字下げされたコード 箇条書きの外で、空行のあとの4つ以上の空白かタブで始まる行 除く
数式ブロック $$ で囲まれた範囲 除く
HTMLのコメント <!-- から --> まで 除く
| で始まる行 除く
引用 > で始まる行 除く
見出し # で始まる行 地の文に含めず、見出しの数として数える
水平線 ---***___ だけの行 除く
注記ブロック :::note::: の行 記号の行だけを除き、中の文章は地の文として扱う
脚注の定義 [^...]: で始まる行 除く
箇条書き -*+1. で始まる行と、その後に続く字下げされた行 箇条書きとして別に数える
地の文 それ以外の空でない行 文の指標に使う

行の中では、インラインコード、インラインの数式、HTMLのコメントとタグ、画像、URLを除き、リンクは文字だけを残しました。太字は数えてから記号を外しています。文字数は空白を除いて数えました。

文は「。」「!」「?」「!」「?」の直後で区切り、閉じかっこが続くときは閉じかっこまでを前の文に含めます。行の終わりも文の終わりとみなしますが、行が読点で終わるときは次の行とつなげます。行の終わりを文の終わりとみなさず、段落の中の行をすべてつなげて句読点だけで区切った場合も計算しましたが、平均文長の差は−0.05、変動係数の差は−0.08で、結論は変わりませんでした。

Appendix B: 予測値と差の計算

指標の年ごとの平均を m_y とします。2019〜2022年の4点に最小二乗法で直線を当てはめ、傾きを b として、2026年の予測値を次のように求めます。

m^2026=mˉpre+b×(20262020.5)\hat{m}_{2026} = \bar{m}_{\mathrm{pre}} + b \times (2026 - 2020.5)

ここで m_pre の平均は2019〜2022年の年ごとの平均の平均で、2020.5はこの4年の中央です。差は、AI以前の記事単位の標準偏差 s_pre で割って標準化します。

d=m2026m^2026spred = \frac{m_{2026} - \hat{m}_{2026}}{s_{\mathrm{pre}}}

信頼区間は、著者を単位にしたブートストラップで出しました。全期間の著者を復元抽出し、選ばれた著者の記事をすべて使って年ごとの平均を計算し直し、直線の当てはめから d までをやり直すことを1,000回繰り返して、2.5パーセンタイルと97.5パーセンタイルをとっています。地の文の文字数は対数をとってから同じ計算をしました。

Appendix C: 条件を変えた計算

予測値との差と、条件を変えた計算

除外や集計の条件を変えて、予測値との差を計算し直しました。

指標 主な分析 企業アカウントを除く 投稿キャンペーンを除く AI関連タグを除く 著者ごとに平均 下限100字 下限1,000字 極端な値を置き換える 句読点だけで区切る
平均文長 +0.01 +0.03 +0.01 +0.00 −0.11 +0.06 −0.09 +0.15 −0.05
文長の変動係数 −0.07 −0.09 −0.07 −0.06 −0.07 −0.03 −0.11 −0.06 −0.08
読点間の平均文字数 −0.17 −0.17 −0.17 −0.16 −0.18 −0.19 −0.18 −0.41
地の文の文字数 +0.89 +0.95 +0.88 +0.77 +0.75 +1.03 +0.54 +0.88
箇条書きの割合 +0.57 +0.59 +0.57 +0.56 +0.47 +0.43 +0.74 +0.58
太字の頻度 +0.84 +0.87 +0.85 +0.80 +0.89 +0.86 +0.83 +0.91
  • 下限100字と下限1,000字は、地の文の文字数の下限を300字から変えた計算です
  • 極端な値を置き換える計算は、AI以前の記事の1パーセンタイルより小さい値と99パーセンタイルより大きい値を、その境目の値に置き換えています。2022年には地の文の1文の平均が約2,900字の記事が1件あり、平均文長と読点間の平均文字数を押し上げていたので、この計算も載せています
  • 句読点だけで区切る計算は、行の終わりを文の終わりとみなさない規則で、平均文長と変動係数だけに関係します

どの条件でも、地の文の長さ、箇条書き、太字の差は+0.4以上で、平均文長とばらつきの差は±0.2の範囲に収まっています。

Appendix D: 語彙の分析の方法と探索的な指標

対数オッズ比は、Monroeらの informative Dirichlet prior を使いました。語 w の出現回数を2026年で y_i、AI以前で y_j、全期間で a_w とし、それぞれの総語数を n_in_ja_0 とします。

δw=logyi+awni+a0yiawlogyj+awnj+a0yjaw\begin{aligned} \delta_w &= \log\frac{y_i + a_w}{n_i + a_0 - y_i - a_w} \\ &\quad - \log\frac{y_j + a_w}{n_j + a_0 - y_j - a_w} \end{aligned} zw=δw1yi+aw+1yj+awz_w = \frac{\delta_w}{\sqrt{\frac{1}{y_i + a_w} + \frac{1}{y_j + a_w}}}

excess vocabulary は、語ごとにAI以前の4年の文書頻度に直線を当てはめ、傾きを b_w として、2026年の予測値 q_w との差と比を見ます。傾きが負のときに0とするのは、もともと減っていた語の増加を大きく見積もらないためです。Kobakらは2021年と2022年の2点から2年先の2024年を予測していますが、今回は4年分に直線を当てはめて4年先を予測しています。

qw=pw,2022+4×max(bw,0)Δw=pw,2026qwrw=pw,2026qw\begin{aligned} q_w &= p_{w,2022} + 4 \times \max(b_w, 0) \\ \Delta_w &= p_{w,2026} - q_w \\ r_w &= \frac{p_{w,2026}}{q_w} \end{aligned}

探索的な指標の全結果です。差は予測値との差で、単位はAI以前の標準偏差です。

指標 AI以前 2025年 2026年 予測値との差 AI以前の平均との差
MATTR(語彙の多様性) 0.575 0.607 0.624 +1.12 +1.00
見出しに「まとめ」がある記事の割合 12.1% 38.0% 52.0% +1.05 +1.24
ダッシュ「—」「―」 0.043 0.062 0.426 +0.95 +0.81
漢字の割合 19.0% 22.6% 24.4% +0.58 +0.97
1文あたりの読点の数 0.627 0.785 0.949 +0.56 +0.78
見出しに絵文字を含む記事の割合 0.9% 11.4% 5.9% +0.52 +0.53
タイトルの文字数 33.9 37.6 42.2 +0.46 +0.51
漢語の割合 18.1% 21.7% 21.4% +0.31 +0.67
です・ます調の文の割合 50.2% 56.8% 66.1% +0.23 +0.47
文頭「さらに、」 0.012 0.027 0.034 +0.20 +0.21
表の数 0.212 0.344 0.498 +0.20 +0.26
タイトルに「徹底解説」を含む記事の割合 0.0% 0.3% 0.3% +0.18 +0.19
一人称 0.649 0.678 0.882 +0.14 +0.19
和語の割合 62.2% 59.5% 63.0% +0.13 +0.09
感情を表す語 0.051 0.026 0.039 +0.12 −0.04
全角コロン「:」 0.596 1.910 0.834 +0.10 +0.13
矢印「→」 0.333 0.741 0.498 +0.09 +0.12
見出しに「おわりに」がある記事の割合 4.9% 8.2% 10.9% +0.02 +0.29
ひらがなの割合 37.3% 34.8% 38.6% +0.02 +0.14
文末「について解説します」 0.003 0.017 0.007 +0.00 +0.05
絵文字の数 0.300 0.672 0.389 −0.00 +0.04
タイトルに「してみた」を含む記事の割合 3.1% 3.7% 3.6% −0.03 +0.03
話し言葉の文末 0.039 0.027 0.012 −0.04 −0.11
英字の割合 19.8% 17.2% 14.2% −0.07 −0.47
文体が混ざった記事の割合 48.0% 47.3% 30.8% −0.08 −0.34
見出しに「はじめに」がある記事の割合 19.6% 38.5% 35.5% −0.09 +0.40
「(笑)」 0.009 0.009 0.004 −0.11 −0.04
文末「できます」 0.576 0.681 0.570 −0.11 −0.01
文末「しましょう」 0.114 0.095 0.034 −0.12 −0.16
文末「することが可能です」 0.012 0.015 0.004 −0.15 −0.07
jReadability(小さいほど難しい) 2.59 2.39 2.02 −0.18 −0.46
感嘆符 0.933 0.987 0.295 −0.18 −0.25
文頭「なお、」 0.064 0.042 0.046 −0.19 −0.06
タイトルに【】を含む記事の割合 14.2% 20.8% 16.2% −0.19 +0.06
コードの文字数の割合 28.9% 24.3% 18.9% −0.19 −0.40
文頭「また、」 0.207 0.156 0.119 −0.39 −0.17
カタカナの割合 15.3% 16.7% 14.1% −0.50 −0.18
外来語の割合 7.9% 8.1% 6.8% −0.50 −0.29
見出しの数 5.726 8.010 5.636 −0.55 −0.01
タイトルに「完全ガイド」を含む記事の割合 0.0% 0.5% 0.6%

文頭と文末の言い回し、記号、一人称、感情を表す語、話し言葉の文末、「(笑)」、見出しの数、表の数、絵文字の数は、地の文と箇条書きの1,000字あたりの回数です。見出しの数は予測値との差が−0.55と大きく出ていますが、AI以前の平均との差はほぼ0です。2022年の値が高かったせいで予測値が高くなっただけで、ほとんど変わっていません。MATTRはCovington and McFall (2010) の方法で窓の幅を100語にしています。jReadabilityはjReadabilityの式で計算しました。

References